おすすめCD プロコフィエフのソナタとピアノ協奏曲

たまには音楽の記事も書かねばということで、今回はプロコフィエフのおすすめCDを。

画像

ロシアを代表する作曲家の1人、プロコフィエフ。
その風貌はさながら、「怖くないプーチン」「KGBで殺しを学ばなかったプーチン」といった感じ。
極めて独創的な作風で、機能和声を重視せずに単調な和声や旋律を多様な形に変形していくような曲が多い。
彼の曲は常にリズムが印象的で聴衆に強烈な印象を与えてくれます。
ピアノにおいては打楽器のように単調な旋律と複雑なリズムを刻むようなパッセージが多く、あっと思わせるような突拍子もないアイディアが豊富で、とにかく聴く人を飽きさせない。
同じくロシアの代表的な作曲家であるスクリャービンが和声の発展から新しい響きを生み出そうとしたのに対して、プロコフィエフはリズムの発展から新しい音楽を創りだしたように思えます。
2人の音楽は全く異なるものですが、共通することは「西洋音楽の伝統に捉われない新しい音楽語法を創りだした点」です。
スクリャービンは1872年生まれ、1915没。
プロコフィエフは1891年生まれ、1953没なので、プロコフィエフのほうが少しだけ若い世代になります。
(ちなみに同じくロシアを代表する作曲家のラフマニノフは1873年生まれなので、スクリャービンと同世代です。)
スクリャービンが機能和声の極限の発展から崩壊へと至り、独自の和声(神秘和音)の開発から無調へ発展し、それがその後のロシアアバンギャルドの作曲家達の系譜へと連なる中、プロコフィエフも決してその影響がなかったわけではありませんが、どちらかというとプロコフィエフはロシアアバンギャルドでもなく、かと言って社会主義リアリズムでもなく、一匹狼的に自分のオリジナリティを追求していった作曲家に思います。
ソヴィエト時代にアメリカへ亡命したこともあり、生涯に渡って独創的で自由な作風を発揮した作曲家です。
スクリャービンの音楽が有機的で曲線的だとしたら、プロコフィエフの音楽は無機的で直線的な印象を与えます。
調性の枠に捉われない作風は、当時としては前衛に属するものだったと思います。
しかしながら逆に無調を常に意識するわけでもなく、ダンスミュージックのような強烈なリズムと単純なモチーフから曲を展開していく彼の作風は決してとっつき難いものではなく、むしろコアな音楽ファン以外の層にもなじみやすい音楽だと言えます。
いわゆる、「現代音楽」と言われるような作品はなかなかとっつき難いイメージが強く、その響きを受け付けない人も多いものですが、プロコフィエフの音楽を受け付けない人は少ないのではないでしょうか。
あら不思議、現代音楽が苦手だった人がプロコフィエフの曲をたくさん聴いていたら耳が受け入れるようになってきた!
なんて話もちょくちょく耳にします。
大変大雑把な意見ですが、現代音楽の面白さをコアな聴衆以外にも教えてくれる作曲家、とも言えるかもしれません。
さて解説が長くなりましたが、彼のピアノソナタ。
彼はその生涯に渡って9曲のピアノソナタを作曲しています。(10番は未完であり、ソナタとして完成させたのは9番まで)
質、量、共に十分で、スクリャービンやメトネルと並び、ロシアのピアノソナタ作曲家の大家と言えるのではないでしょうか。
そんな彼のピアノソナタは技術的にも難曲が多く、細かいパッセージや軽快なリズムを同時に要求されます。
たくさんのピアニストが演奏を残していますが、ユキネコ的におすすめをいくつか紹介。

ピアノソナタ全集を買うならばおすすめしたいのが、マッティ・ラエカリオによるソナタ全集。

画像

ショスタコーヴィチとハリー・ポッターと亀井静を足して3で割った」ような風貌のラエカリオはフィンランドのピアニスト。
彼のプロコフィエフのソナタ全集が素晴らしい!
1番から9番までのソナタ全曲と、束の間の幻影 作品22などが収録されています。
特筆したいのはやはりソナタで、軽快なリズムと豪快なダイナミズム、快速のテンポを高い技術力で両立しています。
特に6番、7番、8番などの演奏が良い! (・∀・)
個人的に、プロコフィエフは快速のテンポで弾ききるようなスタイルがその音楽の魅力を発揮させてくれると感じます。
しかしそれを意識するあまり技術的困難を克服できず、細かい音の明瞭さと快速のテンポを両立させているピアニストは少ないと思います。
そこにきてラエカリオの演奏はすごい。
ピアノを轟々と鳴らすパワフルさもありながら、決して細部の音が潰れていません。
それでいてリズムが軽快でテンポも速いのだから、理想的なプロコフィエフの演奏と言っていいのではないでしょうか?
有名なソナタ第7番の第3楽章などは3:10秒で弾ききっていますが、雑な印象は全くありません。
この曲はワタクシ的には暴走機関車のように突っ走ってほしいのですが、ラエカリオのそれはまさに暴走機関車!
この曲はグランツーリスモ5というレースゲームのオープニング曲として使われていますので、音楽ファンでなくとも聴いたことがある人が多いのではないでしょうか?
ゲームで使用されたのはラン・ランによる演奏で、丁寧で魅力的でしたが、あの演奏に慣れた人がラエカリオの演奏を聴けばそのアグレッシブさに「はっ!」っとすること間違いなしです。
(GT5のオープニングにプロコフィエフのソナタ7番を使った開発者のセンスは素晴らしいと思いました。)
6番、8番も非常に良い演奏ではないでしょうか。
もちろん1番~5番、9番なども間違いない演奏であり、初めてのソナタ全集としてベストな選択だと思います。
プロコフィエフをあまり聴いたことがない人、ソナタ全集がほしいけどどれを買えば間違いないのかわからない、そんな人の最初の1枚にぜひぜひおすすめです。
最近amazonでは絶版のCDもMP3で購入できるようになってきてうれしい限りです。 ( ^ω^)

プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ全集 他
ONDINE
2011-08-10
S. Prokofiev

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ全集 他 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル




次におすすめしたいのは、フレディ・ケンプによるプロコフィエフピアノ作品集。

画像

ケンプは英国のピアニスト。20世紀の巨匠的ピアニストのウィルヘルム・ケンプの遠縁にあたる。
とにかく演奏が的確で丁寧という印象があります。
彼のプロコフィエフアルバムが、すごく良い! (・∀・)
こちらはピアノソナタ全集ではなく、1番・6番・7番、それと小品が入ったアルバムです。
全体的にとても良い演奏だと思うのですが、特にソナタ第1番とトッカータ作品11がものすごく良い。
プロコフィエフのソナタ第1番は習作の域を出ていないと言われ、まだ彼独自の和声やリズムも多く出現しません。
しかし非常に完成度の高い曲で、後期ロマン派のような作風です。
ユキネコは個人的に非常に好きな曲です。
こういった作品を聴くと、優れた前衛的作曲家は基礎が完璧なのだと感嘆いたします。
スクリャービンやプロコフィエフの初期作品を聴けば、伝統的な作曲技法を完璧に習得していることがわかります。
ピカソが写実的な絵画を極めた後、前衛的な作風に進んだように、やはり革新的かつ前衛的でありながら優れた作品を創りだす人物というのは、実は伝統技法にも長けた天才なのだとつくづく感じるものです。

で、ケンプの演奏ですが、ソナタ第1番は実にロマンティシズム溢れる情感豊かな演奏。
元々丁寧な演奏をするピアニストなので、感傷に没入することなくコントロールされているからなお良い。
ダイナミズムもあってピアノもよく響いているし、言うことなしの演奏ではないでしょうか。
そして有名なトッカータ。これもすんごく良い演奏。
とにかく丁寧なんだけど、それでいてしっかりテンポも速い。
テンポや技術を意識しすぎるゆえに、単調な演奏になりがちなトッカータですが、彼の演奏はバランスがとても良い。
テクニカルをきっちり完璧に仕上げた上に、音の細部にもこだわっているのがわかります。
強弱も大げさではなく、それでいて必要なだけしっかりと付けていて曲に立体感がある。
これ、個人的にはプロコフィエフのトッカータの演奏として最高の部類なのではないかと思っています。
6番、7番のソナタもラエカリオのようなキレッキレのアップテンポではないのですが、とにかく良くまとまっている演奏です。
しかしやはり特筆するべきはソナタ第1番とトッカータ。この2曲が好きな人は購入して損はないのではないでしょうか。





もう1つおすすめしたい演奏がございます。

画像

ロシアのピアニスト、アンドレイ・ガブリーロフによるピアノソナタ集。
ガブリーロフと言えば、「とんでもない指回り」「キチガイのような速いテンポ」などでピアノファンに有名な演奏家。
ともするとその演奏は時々雑なこともあり、当たり外れが多い演奏家にも思えます。
曲によっては「なんだこの演奏。全然曲に合ってない!」と思えるときもあり。
しかし当たった時の当たり方が半端じゃなく、「この演奏のためだけにこのCD買う価値あり」という演奏もする実に悩ましいピアニストであります。
その、大当たりの1つがプロコフィエフのソナタ第8番の演奏。
というか第8番の第3楽章。それだけのために買ってしまう悩ましい彼のアルバム。
キレッキレの指回りとテンポ、そして硬質な音が最強に第8番第3楽章に合っているのです。
はっきり言ってワタクシも良い演奏なのかよくわからない。w にも関わらず強烈に魅力的。
上で紹介したケンプのような丁寧な演奏とは全く違う。
しかし彼の暴走するようなピアニズムはたまに曲によってはとんでもない相性を発揮する。
時々発生する「おいおい、やってくれたなガブリーロフ。(^ω^;)」の1つであります。
(スクリャービンのソナタ第4番などもそれ。このピアニスト、失敗も多いがたまに誰の追随も許さないとんでもない大ジャンプをする原田雅彦、元スキージャンプ選手のようでもあります。)
このアルバムにはソナタ第3番、第7番、第8番の3曲が収録されています。
ソナタ第3番などもなかなか良い演奏です。でもやはり第8番。
これは聴いていただかないとわからないし、個人的に「他人におすすめできる良い演奏」とも違う気がするので、とにかく興味のある人はamazonの視聴で第8番の第3楽章を聴いてみてください。
CDは絶版のようですが、MP3ダウンロードがあります。
この演奏に強烈な魅力を感じるかどうかはその人次第。
ワタクシ的には抗いがたい魅力を感じるので、紹介させていただきました。

Prokofiev: Piano Sonatas Nos. 3, 7 & 8
Universal Music LLC
1992-07-25

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Prokofiev: Piano Sonatas Nos. 3, 7 & 8 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル




さて、最後に紹介したいのはプロコフィエフのピアノ協奏曲全集。
これは、1曲だけ抜き出せば色々な演奏家による良い演奏があり、迷ってしまう。
有名な第3番などは数え切れないほどの演奏があるし、そしておすすめしたい演奏も多い。
しかし全集となると、何をおすすめしたら良いだろうか。
全体的によくまとまっているニコライ・デミジェンコの全集などもおすすめしたいところであるが、ユキネコ的には、、

画像

ロシアのピアニスト、ボリス・ベルマンによるピアノ協奏曲全集。
ひげ」というあだ名しか考えられない彼による全集は欠点がありません。
演奏の質がとても高く、なおかつ全曲収録しているということで、ピアノ協奏曲全集として最良の選択ではないでしょうか。
ピアノ協奏曲においては、まずピアノの演奏技術もさることながら、「ピアノの音がオケに負けていない」ことが重要です。
ベルマンの演奏は全く負けていません。全ての音が明瞭でテクニックも文句なし!
オーケストラはロイヤルコンセルトヘボウなので、こちらも超一級の演奏でぬかりなし。
管楽器の音が印象的で、アクセントのように強調されることが多い演奏なのですが、それがプロコフィエフのピアノ協奏曲と非常に良く合っていると思います。
ピアノ、オケ共にダイナミズムもあるし、曲の組み立てもしっかりしています。
テンポも速すぎず、それでいてしっかり軽快な速度は持っていて実に痛快。
そして録音環境・音質も重要ですが、この点でもこのアルバムはとても良いものと言えます。
プロコフィエフのピアノ協奏曲全集はこれ1つ持っていればまず間違いないと言える名盤なのではないでしょうか。
プロコフィエフ好きの人にも、また、これからプロコフィエフのピアノ協奏曲を聴いてみたいという人にも自信を持っておすすめできます。
ピアノ協奏曲全集の選択としてはこれがベストだと思います。
(ベルマンはプロコフィエフピアノ作品全集も出しています。しかしソナタなどの演奏は前述した通り、ラエカリオなどのほうがおすすめできます。ベルマンの演奏で特に素晴らしいのは協奏曲だと思います。)
プロコフィエフのピアノ協奏曲全集がほしいと思っているけど、どれが良いか迷っている人。
他の有名な盤を差し置いてもこの全集は絶対におすすめできます。ぜひ一度!

Piano Concertos
Chandos
2009-06-17
Prokofiev

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Piano Concertos の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



ということでひさしぶりに音楽の記事でした。(頻度低くて、たまにはちゃんと書かないとと反省 (^ω^;)
それではみなさん、ごきげんよう ( ^ω^)/~~


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック